BASICS

基礎知識

西洋占星学の基本を学ぶ

順行と逆行

天体は黄道上を西から東へと運行しています。これを「順行(direct)」と呼びます。それに対して、天体が順行とは反対の方向に移動しているように見える現象を「逆行(Retrograde)」と呼びます。逆行は占星学において重要な概念であり、天体の影響が通常とは異なる形で現れると考えられています。

逆行はなぜ起こるのか

実際に天体が逆方向に動くことはありません。逆行はあくまで地球から見た「見かけ上」の動きです。占星学は地球中心(ジオセントリック)の視点に基づいているため、地球と他の惑星の公転速度や軌道の違いによって、惑星が一時的に逆方向に動いているように見える期間が生じます。

たとえば、高速道路で隣の車を追い越すとき、追い越される車が後ろに下がっていくように見えるのと同じ原理です。内惑星(水星・金星)は地球より内側を速く公転するため、地球を追い越す際に逆行して見えます。外惑星(火星以遠)は地球より外側をゆっくり公転するため、地球が追い越す際に逆行して見えます。

太陽と月は逆行しません。太陽は地球の公転運動を反映したものであり、月は地球の衛星であるため、どちらも見かけ上の逆行現象は起こりません。

ステーション(留)

天体は逆行を開始するときと終了するときに、ほぼ動きを止めている期間があります。これを「ステーション(留)」と呼びます。順行から逆行に転じるときを「逆行ステーション(SR: Station Retrograde)」、逆行から順行に戻るときを「順行ステーション(SD: Station Direct)」といいます。

ステーションの期間は、天体のエネルギーが特に集中的に作用すると考えられており、出生図においてステーション付近の天体を持つ人は、その天体のテーマに特別な強調が置かれることがあります。

出生図における逆行の意味

出生図(ネイタルチャート)に逆行の天体がある場合、その天体の表すエネルギーが内向きに作用する傾向があります。逆行天体を持つ人は、そのテーマについて未来よりも過去のことに意識が向きやすくなります。

ただし、これは必ずしも否定的な意味ではありません。振り返りや復習、やり直し、再挑戦には適しており、深い内省を通じて本質的な理解に至ることができます。外に向けて発揮する前に、内面でじっくりと力を蓄える時期と捉えることができます。

出生図中の逆行天体の数が多い人は、全体的に内省的・熟考型の傾向を持つとされます。また、トランジット(経過)で逆行していた天体が順行に転じるタイミングは、そのテーマが外に向けて動き出す転機となることがあります。

水星逆行 -- 最もよく知られる逆行

水星逆行は年に約3回、各3週間ほど発生するため、最も頻繁に経験する逆行現象です。水星はコミュニケーション、思考、移動、情報伝達を司る天体であるため、その逆行期間中はこれらの分野に混乱が生じやすいとされます。

具体的には、メールの誤送信、交通機関の乱れ、約束の行き違い、機器の故障、契約上の見落としなどが起こりやすいとされています。重要な契約や購入の決定は、可能であれば水星逆行期間を避けることが推奨されます。

一方で、水星逆行期間は「再」のつく行動(再検討、再会、再学習、復習、修正)に適した時期でもあります。過去の未完了事項を片付けたり、昔の友人と再会したりするのには良い時期です。

各惑星の逆行

水星の逆行

年3回、各約3週間

コミュニケーション、情報伝達、文書、移動に関するトラブルが起きやすくなります。契約や重要な交渉は慎重に進めるべき時期です。一方で、過去の見直しや再学習には適しています。

金星の逆行

約1年半に1回、約40日間

金銭や恋愛に関する見込み違いが起きやすくなります。過去の恋愛を振り返ったり、価値観を再評価する時期です。美意識や人間関係における本当の望みに気づくきっかけになります。

火星の逆行

約2年に1回、約2か月半

衝動的・短絡的な行動に注意が必要です。一方で、自分の行動スタイルや情熱の向け方を模索する好機でもあります。内面のエネルギーを見つめ直す期間となります。

木星の逆行

年1回、約4か月間

拡大・発展のスピードが低下し、内面的な成長に意識が向きます。外に広がるよりも、現状を現実的に把握し、これまでの成果を整理・消化する時期です。

土星の逆行

年1回、約4か月半

自分自身の課題や責任と深く向き合う期間です。社会的なルールや制約を内面化し、本質的な自己規律を育てるときです。過去に積み残した課題が浮上することもあります。

天王星の逆行

年1回、約5か月間

社会と自分の方向性の相違を解決する期間です。外的な変革よりも、内なる独自性や自由への欲求に目を向けるときです。

海王星の逆行

年1回、約5か月半

独自の夢や理想を追求する期間です。集合的な幻想に流されず、自分自身のビジョンや霊的な感性を深めるときです。

冥王星の逆行

年1回、約5か月半

無意識の力をどの方向に活用するか模索する期間です。深層心理と向き合い、根本的な変容のプロセスを内面で進めるときです。

外惑星の逆行について

木星から冥王星までの外惑星は、毎年数か月にわたって逆行します。そのため、出生図においてこれらの天体が逆行していることは珍しくなく、個人差というよりも世代的な傾向として読み解くことが一般的です。一方、水星・金星・火星の内惑星の逆行は出生図において比較的少なく、より個人的な意味合いを持つとされます。

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